夜泣き×鍼灸
■赤ちゃんが泣く理由
どうして赤ちゃんはよく泣くのでしょうか。
もちろん、泣くには泣くだけの理由があるからに違いがありません。
今回は、赤ちゃんの泣く理由と大人の都合について、簡単にお話します。
例えば「お腹がすいた」という欲求1つとっても、赤ちゃんは胃腸が未熟なので、大人のように1日2~3食で済ませるようなボリュームの食事を一回に摂ることはできません。
赤ちゃんは食事(母乳)を頻回に分けて摂取し、1日の生命維持と成長に必要な栄養をまかないます。
その結果、「お腹がすいた」という欲求を発する回数は大人よりずっと多くなります。
当然、食事以外の基本的欲求の必要回数も大人よりずっと多くなります。
言葉が話せない赤ちゃんにとって、めまぐるしく変化する欲求を伝え、欲求を満たすための手段として「泣く」ことはとても重要な行為といえます。
「泣く」ことには上述の他に別の意味もあります。
それは、未熟な呼吸器系のトレーニングとして重要であるということです。
心臓や胃腸は自律神経と内臓筋が全自動で作業してくれますが、内臓機能の中で唯一、肺だけが運動神経と骨格筋によって動かされていて、全自動ではありません。
赤ちゃんの呼吸運動は、赤ちゃんの手足の運動と同じく未熟で、最初は思うように動かせません。
うつ伏せ寝などで発生する原因不明の赤ちゃんの突然死が、未発達な呼吸機能に一因があるという説もあります。
基本的欲求が満たされている赤ちゃんが突然泣き出したら、それは「呼吸がやりづらくなってきたから何とかしてちょうだい」のサインかも知れません。
赤ちゃんの皮膚や身体全体に一定リズムの適度な物理的刺激を与えると、呼吸機能が安定することが知られています。
赤ちゃんの未熟な呼吸機能を安定させる方法の1つに「ゆり篭」があります。
昔から洋の東西を問わず赤ちゃんを揺らす道具があるのは生理学的にも理にかなったことといえます。
毎晩「夜泣き」する赤ちゃんを車に乗せてしばらくドライブすると泣き止むばかりかご機嫌になることはよく聞くお話しです。
「ゆり篭」と同じ原理といえます。
■夜泣きの鍼灸治療
赤ちゃんの「夜泣き」に対する鍼灸治療もあります。
江戸時代から昭和の初期にかけて「小児針」という形式で盛んに行われてきました。医学的にも一定の効果が証明されています。
小児針や刮痧(かっさ)による皮膚刺激を定期的に行うことは、赤ちゃんの自律神経を安定させるだけでなく呼吸機能を賦活させるうえでも安全かつ効果が期待できるケア法の1つであるといえます。
もし、基本的欲求が満たされている赤ちゃんが突然泣き出し、いつもと違う泣き方をしていたら、病気や身体の変調などの警告サインかも知れません。
慌てず速やかに小児科に相談しましょう。
大人には、昼は活動する時間、夜は寝る時間といったはっきりとしたライフスタイルがありますが、赤ちゃんにはありません。
昼に活動する大人(親)にとって、昼に赤ちゃんが泣き出しても、すぐさま駆けつけて欲求を満たしてあげることができます。
欲求に的確に対応できたら、当然のことながら赤ちゃんは泣きやみご機嫌になります。
しかし、もし、睡眠中に泣き声で突然起こされたらどうでしょうか、昼と同じ対応が速やかにできるでしょうか。
辛いものがあります。
「夜泣き」という言葉があって「昼泣き」という言葉がないのは、大人の都合なのかも知れません。
とは言っても、親の側もいつも万全とは限りませんし、赤ちゃんについて知らないことも色々あるでしょう。
家族だけでリカバリーできない状況もあるかも知れません。
そんなときに頼りになるのが、自治体が行っている子育て支援センターなどの公共サービスです。
日常からそのようなサービスを利用し、生活や食事、メンタルヘルスなどのアドバイスを取り入れることも大切なことといえます。
渡邉 勝久 (→渡邉先生の紹介はコチラ!)