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人の人生に関わる不妊治療
女性でもずっと続けられる「鍼灸治療」で
今後は女性の一生を支えていきたい
女性でもずっと続けられる「鍼灸治療」で
今後は女性の一生を支えていきたい
上谷紘美さん
英ウィメンズクリニック勤務2009年 鍼灸コース卒業
入学前
選手のケアをきっかけに…トレーナーとして鍼灸を学ぶ
- どのような経緯でスポーツトレーナーを目指そうと思ったのですか。
- 中学のときに陸上をしていたので高校でも陸上をしようと考えていましたが、先生からマネージャーに興味は無いかと声をかけられました。選手ではなくともスポーツに関わりたい気持ちが強かったので、引き受けました。怪我をした部員に見様見真似でテーピングをしたら、「試合で楽だった」と言ってもらえた事が、とても嬉しくて、その頃からスポーツトレーナーを考え始め、高校卒業後はスポーツトレーナーの学校に入りました。学校には2年通い、実習で大学のアメリカンフットボール部のトレーナーをしました。その経験から、卒業後も自分で探してアメリカンフットボールのトレーナーになりました。
- 鍼灸師を目指されたきっかけは何ですか。
- 肉離れをした選手が次の週には、ジョギングをされていたので、何かしたのか尋ねたところ、鍼をして調子が良くなったと言われました。その時、自分には絶対治せないと思っていた症状が治っていた事に興味が湧きました。 また、体格の良い選手たちをマッサージしたり、ストレッチするのは体力的に大変だったので、鍼であれば女性でも長く続けられるかなと思いました。しかし、当時はまだ自分自身では鍼灸治療を受けたこともありませんでした(笑)
- 神戸東洋医療学院を選ばれた理由は何ですか。
- 神戸東洋医療学院では、中医鍼、トリガーポイント療法、反応点など選択肢がとても多く、さまざまな勉強が出来ると感じました。また、整形外科で一緒に働いていた人の薦めもありましたし、先生の雰囲気もとても良かったので神戸東洋医療学院を選びました。
在学中
実際に「本物」に触れる面白さ
- 学生生活で苦労されたことはありますか。
- 毎朝5時頃に起きて尼崎の職場まで行き、授業を受ける為に三宮へ戻ってきて、授業が終わればまた仕事に戻る日もあったので、毎日ヘトヘトでした。但し、勉強はトレーナーの時よりも人体の構造について深く学べたので、とても興味深く、大変だとは感じませんでした。
- 学生生活で面白かったことは何ですか。
- 臨床実習です。正直、3年生の臨床実習に入るまでは、体を触っても経穴が分かりませんでした。先生に、「ここにあるでしょ」って指を持っていかれても分かっていませんでした(笑)。でも、実際に患者さんに打たせて頂くようになって、とても小さいものでも分かるようになっていき、どんどん面白くなっていきました。 在学中にトレーナーをさせて頂いていたチームでは、資格が取れるまでは打たないと固く決めていましたし、学生同士で打ってもそこまで症状が出ている訳ではないので、実際に患者さんを診るようになってから鍼の効果を実感するようになりました。また、実際にトレーナーをされている先生が学院にいたので、こうゆう怪我の時はどう打てばいいか、逐一聞きに行けた事がとても勉強になりました。思い返せば、本当によく先生を捕まえていましたね(笑) 同級生は、高校生から、母の年齢に近い方まで幅広くいましたが、みんな仲が良くて去年の年末にも久しぶりに集まりました。
- 在学中に中国への研修旅行も経験されていますが、如何でしたか
- いろいろ衝撃をうけました(笑)。文化の違いもそうですが、やはり本当の解剖というのがとても勉強になりました。お料理も、本当にいろいろなものを食べました(笑)。 実際の治療現場では、中国では鍼灸治療があたり前で、想像以上に沢山の患者さんがいた事に驚きました。
- 国家試験に受かった時の心境を教えてください。
- トレーナーとして、やっと鍼が打てると思いました。
卒業後
トレーナーから「不妊治療」の専門家に!
~不妊治療は人生に携わる大きなやりがい~
- 鍼灸師の資格を取得され、現在に至るまでの経緯を教えて下さい。
- 卒業後、土日はトレーナーをしつつ、それ以外の日は鍼灸接骨院で働き始めました。そこでは、自由にさせて頂いていたのですが、誰も教えて下さる方がいないという環境でもありました。
- 今では「不妊治療」一本というスタイルですが、そのキッカケやトレーナーを引退した理由を教えてください。
- トレーナーを始めたのは21歳頃だったのですが、当時何も分からない状況から、少しずつ信頼を得てテーピングをさせてもらったり、本格的な治療をさせてもらったりする事で成長してきました。でも、アメフト選手は選手生命が短く、お世話になった選手たちがどんどん引退していくのを見て、モチベーションが下がっていったのが理由の一つです。
- 神戸東洋医療学院を卒業してから約1年経ったころだと思います。患者さんの中に「不妊治療をして欲しい」という希望がありました。当時、「あぁ全然分からない分野だ」と痛感しました。その頃から、不妊についてもっと勉強したいと考えるようになりました。
- そして、当時働いていた鍼灸接骨院で患者様お一人が妊娠された事がきっかけです。トレーナーとしての喜びは、選手が試合で活躍する事やチームが勝つことにありますが、患者さんが妊娠するという事はそれを上回る、「命」の誕生に携わるという感動がありました。
- 現在、不妊コーディネーターとして働かれている『英ウィメンズクリニック』との出会いや、クリニックについて教えてください。
- 患者様の妊娠に感動していたときに、現在働いている『英ウィメンズクリニック』が不妊コーディネーターを募集していたので、「ここだ!」と思い就職しました。最初は、あまり鍼灸は出来ないだろうと思っていたのですが、面接の際に「鍼灸師の資格を不妊治療に活かしたいですか」と聞かれ「もし、打てるのであれば是非したいです」と答えていました。
- 医院は、垂水区と三宮にあります。垂水区では、人工授精までですが、三宮ではより高度な体外受精も行っています。一日、約400名の患者さんが来院され、その約9割が女性ですが、週に2回程、男性不妊専門の先生もいます。ドクターが約16名、鍼灸師が3名です。不妊コーディネーターは、約11名います。不妊コーディネーターは、薬剤師や心理カウンセラーなど、他分野の資格を持つ方が兼任されている場合が多いです。鍼灸師でも、助産師や看護師の資格を合わせて持たれている方がいらっしゃいます。 不妊コーディネーターの役目としては、ドクターからの検査診断に基づいて、患者さんに人工授精や体外受精などの細かな説明をいたします。鍼灸治療は、患者さんの体調が優れなかったり、体外受精でもなかなか思うような結果が得られない時に、ドクターから指示があります。また、鍼灸以外の代替医療として、アロマやヨガ、栄養カウンセリング等が選択できます。
- 上谷さんが考える、これからの不妊治療で大切な事は何ですか。
- 生活習慣を見直してもらうことです。食べ物でも、添加物が入ったものや体を冷やす物について気づいていない方が多いので、食べ物や冷え対策など自分に出来る事から気を付ける事が大切です。
- これまで患者さんに言われて嬉しかった事は、何ですか。
- 不妊治療は、誰にも相談出来ず一人で悩まれている方が多くいらっしゃいます。不妊期間が長く、辛い治療を乗り越えて妊娠された方から「妊娠しました」と聞くと、とても嬉しいですね。妊娠は赤ちゃんだけでなく、お母さん、お父さんや家族みんなの人生に大きく関わる事なので、そこに携われる事にやりがいを感じます。
- 女性の不妊治療に対する男性の協力は、どのような印象ですか。
- ご夫婦にもよりますね。毎回大きな採卵のときには、仕事を休んでも来られる旦那様もいらっしゃいますし、逆に病院自体行きたくないという方もいらっしゃいます。
- 不妊治療に携わってきて、辛かったことや苦労されたことはありますか。
- 結果が出ない事で、目の前で泣く方もいらっしゃるのですが、私自身は出産も妊娠もしていないので、そんな時に何て声をかければ良いのか分からなくなる時があります。
- 最後に将来の展望を教えてください。
- 絶対開業したいです。 以前はスポーツ系で考えていたのですが、最近は女性の一生をサポートできるような人間になりたいと考えています。これから妊娠を考えていらっしゃる方の『妊活』や、なかなか出来ないとお悩みの方の『不妊治療』、出産後の骨盤矯正、美容鍼、更年期障害の対策など、女性に対しての鍼をメインに取り組んでいきたいです。 開業のイメージとしては、自分のやりたい事を実現していく為にも、忙しくない程度に、ひとりでやっていきたいなと思っています。
鍼灸師を目指す方へメッセージ
my favorite things
小物を作るのが好きで、いろんなものを自分で作っています。これはピアス!
羊毛フェルトで人形を作ったりもします。羊毛フェルトは針で刺しながら作っていくので、「仕事を離れても鍼か!」と言われた事があります(笑)
手先の器用さを生かした趣味。今はブリザーブドフラワーの教室に通っています。
先ほど、お話したように、結果を受けて泣かれる方もいらっしゃいます。その人の立場になって考え、言葉や態度に気を配ることが不妊コーディネーターとして重要です。あとは、身だしなみや声のトーンも気をつけています。患者さんは、診察の段階から随分と待って、私たちのところに説明を聞きに来られます。生理周期にも合わせている為、イライラされている事も多いので、不快なお気持ちにさせないように心がけています。