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スポーツトレーナーとして
鍼灸師として
フィジカルとメディカル両方の視点から
リスク管理をしっかりしていきたい
鍼灸師として
フィジカルとメディカル両方の視点から
リスク管理をしっかりしていきたい
木下貴文さん
Feel Free きのした鍼灸院開業2010年 鍼灸コース卒業
入学前
スポーツトレーナーが鍼灸師資格をもつことで広がる選択肢
- どうしてトレーナーになろうと思いましたか?
- 中学・高校・大学と陸上をしていて、スポーツに関わる仕事はしたいと思っていました。トレーナーを目指すようになったのは高校の頃です。自分自身の競技成績がのびたのが大学に入ってからで、本当は社会人以降も選手としていたかったけど、その頃には今後もやっていく難しさを感じました。もし若い頃に、その時に合った内容のトレーニング指導をうけていたら、もっと上のランクにいけたかもしれないと感じ、アスリートとしてのレベルを自分自身が上げれなかったからこそ、今の若い子にはそうしてあげたいと思うようになりました。
- トレーナーになるまではどのような道筋でしたか?
- 大学を卒業してからスポーツクラブでのインストラクターと、トレーナー活動はしていました。スポーツクラブの上司にもトレーナーとしてやっていきたいということをずっと話しをしていて、そこで上司からの紹介でプロゴルファーのパーソナルトレーナーをすることになったのが大きな一歩でした。トレーナーの資格を取ったのもその頃です。当時は有料でのトレーニング指導を行うところがほとんど無かった時代で、プログラム作成も一からさせてもらうことができました。
- 鍼灸師以外にどんな資格をお持ちですか?
- NSCA認定CSCS、タイトリストTPI認定ゴルフフィットネストレーナー、日本赤十字社救急法救急員など高校卒業後に取得しました。
- トレーナーをやっていく上で様々な医療系資格がありますが、何故「鍼灸師」だったのですか?
- 理由はたくさんありますが、他の資格でスポーツ現場でも活かせられる実技的なスキルは講習会などでもある程度は身につけることができますが、鍼灸治療は鍼灸師にしかできないというところです。 他の資格は外からのアプローチが主ですが、鍼灸の場合は身体の内側や内臓などの疾患に対してのアプローチ、さらには直接患部へのアプローチをする以外に遠隔での治療もできる。鍼灸師資格をとることで、現場で対応できる選択肢が多く治療の幅が全然違ってくるので、他のトレーナーと差を出せる部分、自分の武器にしていきたいと思いこの世界に入ることを決めました。
在学中
自由度が高い学校で、自分の意思で学ぶ
- 神戸東洋医療学院を選んだ理由は?
- 実は県内の社会人を中心としたもうひとつの学校とで悩んでいました。在学していた知人から紹介をうけて、色々と話を聞いていると、神戸東洋医療学院は「自由度」が高い。当時から仕事をしていたので、あまり学校に雁字搦めになってしまうより、自分の意思とペースでしっかり勉強していく方が自分にもあっていると感じたのでこちらにしました。
- 実際はどうでしたか?
- 自由ですね!でもサークル活動や、先生が時間をとって個別に指導してくださるなど、学ぼうと思えばいくらでも勉強できる環境はありました。周りも目的を持った大人が多かったので、授業もとても良い雰囲気でしたよ。僕自身、充実した学生生活を送る為に、出来る限り様々なサークルに参加しました。特にトリガーポイントや臨床基礎サークルは現在の治療スタイルの原型になっています。 授業では聞けない臨床の話を先生や卒業生から聞けたのもよかったです。
- 行事などもたくさんあり、強制ではありませんでしたが、僕は学友会(学生主体の運営組織)に所属していて主催する立場でしたので、色々参加しました。大変ではありましたが楽しかったです。特にスポーツ大会なんかは楽しくて、年齢関係なく良い交流になりよかったです。
- 神戸東洋医療学院の在学中、苦労したことはなんですか?
- 働きながら通っていたので、お金の工面はやはり大変でした。入学前にある程度蓄えていましたが、貯金は減っていく一方だったので不安もありました。今は専門実践教育訓練など国の支援で給付があるのは、うらやましいです。今目指す人たちはいい環境が整っていると思いますよ。
- 今後カリキュラムが増えることについて、経験者としてどう思われますか?
- 僕は午前に整骨院に勤務していて、夜間部だったので午後は時間があり、そこでパーソナルトレーナーとしての活動を継続しつつ、サークルなど積極的に参加でき勉強できましたが、今後カリキュラムが増えるのは社会人にとっては大変そうですね。でも実技が増えるのは良いですよね!やはり鍼を打つ経験は大切です。僕の記憶では神戸東洋は初日くらいにもう自分に鍼を打っていたような気がしますが、他の学校の卒業生の話を聞くと、学校でほとんど打たなかったと聞いています。それで卒業して鍼灸師になって臨床現場に立つのは大変なので…そこが充実するのはいいですね。
- 卒業・国家試験に合格したときの感想は?
- ようやくスタートラインに立った、という感じです。学生だからと守られていた環境から、これからは自分で全て責任を持つというプレッシャーも感じていました。鍼灸師になったからといって周りの環境がガラっと変わったかというと、実はそんなに変わりませんでした。トレーナーの基盤があって、そこに鍼を自然に取り入れていった形ですので、活動のスタイルが変わったわけではなく、ただ大きな武器をひとつ手に入れた。そんな感覚です。
卒業後
リスク管理をしっかりする。その為に鍼灸の知識が活きる
- トレーナーとして、鍼灸の資格を取ってよかったことはなんですか?
- トレーナー関係の資格だけの時は選手が怪我した際や調子が悪い時など、自分で対応できることが少なく、病院へ誘導したりトレーニングを中止したりするしかない部分がありましたが、「これなら練習を継続できる、やめたほうが良い」という判断ができるようになったことや、自分でケアできる範囲であれば、その場でコンディションを整え、復帰させることができるという部分が大きいです。捻挫や肉離れなどの急性期への対応として、アイシングや固定以外のアプローチができるようになり、選手に対してできることの幅がぐんと広がりました。 普段の治療の中でも、疲労回復や可動域改善、体調管理などでは一歩踏み込んだケアができるようになりました。例えば試合前で夜寝れないというアスリートを鍼灸治療し、自律神経を整えることで睡眠を確保してコンディションを整えるなど…。特にプロのアスリートはとても繊細なことが結果に影響してきます。高まった自律神経を整えることで落ち着いた良いテンションで試合に挑んでもらうなど、メンタル的な面もケアすることができるのも鍼灸治療の大きな強みだと思います。
- 治療院のコンセプトは?
- 元々トレーナーをしていた頃からトレーニング指導と治療の両方が出来る形を、30歳くらいを目標としてやってきました。夫婦でやっているので、中医系の症状など専門外や時間をかけてしていくような患者さんの対応については妻に任せて、僕がトレーナーとしてのコンディショニングや運動器疾患をメインに治療に専念できるような役割分担ができています。 トレーナー活動を始めた当初のクライアントであるプロゴルファーからの繋がりや紹介で来院されるゴルフ競技をしている方々が、現在診ている患者の半分近くです。以前は大学でもトレーナー活動を行っていましたが、今は院での対応がメインです。
- 競技としては、何をメインとしていますか?
- 自分自身でもゴルフは最近始めました。若い頃も少し始めようとしていましたが、その頃はやり出した頃の感覚だけを言い出してしまい指導にはうまく繋がらず、トレーナーとしてコンディショニングなどの指導だけに専念しようと考えて一度は止めてしまいました。今では自分だったらこう指導してほしいと感じたり、人それぞれ可動域が違うなど、知識としてと実感としての違いも分かるようになり、体験と指導を完全に分けて考えられるようになったので始めてよかったです。 陸上では講習会や所属しているランニングサークルでも指導を行っていますが、集客や収益の難しさは感じています。
- 三田市に開業されていますが、開業するにあたり場所などの条件などはありましたか?
- 在学中からやっていたパーソナルトレーナーのクライアント達がこの辺りの方々だったので、それ以外の地域に行く選択肢はありませんでした。最初大変なのは患者やクライアントがつくまでなので、わざわざそれを切る勇気もなく、この地域に元々顧客がいたことが大きいです。 駅が近いですが電車で来る人より移動手段は車の人のほうが多く、来やすい場所を選びました。開業したのは2013年で以前は同じ建物の2階で開院していたのですが、昨年、真下のこの1階が空いて移動してからはトレーニングスペースが倍の広さに、治療ベッドも1床から2床に増えました。広い空間を利用してヨガができる設備なども整えスタジオも充実できました。窓も多く明るい環境で、大通りにも面しているので宣伝効果も上がったように感じています。 今のホームページは、実はタフリーインターナショナルに依頼して作成いただいたのですが、トレーナー指導・治療、そして外部講師を招いてヨガや太極拳などのスタジオメニューを入れての3本でやっているので、そこを見せる形やイメージを伝えて依頼しました。自分たちにはそういった技術がないので、上手にわかりやすく作っていただけて満足しています。
- 鍼灸師、トレーナーとして心がけていることや課題はなんですか?
- 観察(望診・聞診)をしっかりすることを心がけています。入ってきたときからその人のしぐさや顔色などでその日のコンディションを把握してメニューを調整します。トレーナーだけの知識の時は、動きのみをみていましたが、鍼灸の中医学の知識も学ぶことで、顔色や声のトーンなども注意深く観察するようになりました。特にトレーニング指導のみのアスリートは自分の症状に気づかないことが多いので積極的に声をかけようにしています。 また、現場での治療は患部への施術(だけ)だと違和感が残る(時がある)ので、遠隔での治療や円皮鍼など(を併用すること)でパフォーマンスに影響が出ないようにしています。 課題としては…常に冷静な対応を心がけていますが、これは反対にもう少し熱さも出して患者にもう一歩寄り添えるように意識していきたいと思案しているところです。
- 鍼灸師としてトレーナーをやっていく上で苦労していることはありますか?
- 一つは発信する力が弱いということです。広告や宣伝などがあまり上手くなく、ほとんどがクライアントでの紹介でしか集客がないので苦労しています。また、鍼灸師やトレーナーとして講習会などには積極的に参加しているほうですが、新しい知識や技術を身につけられる場が減っているので、そこがもう少し充実して欲しいという思いと、自身もがんばりたいなと考えています。
- トレーナーに必要なことはどういったことですか?
- その道を歩んでいく人については、まず自分が何をしたいのか目的を持って決めることが大切です。フィジカルなのか、メディカルなのか、また競技に専門性を持たせるのであれば競技ごとの資格などもあり、学ぶべき選択はたくさんあると思います。医療系の資格はやはりはあったほうが良いですね。 そしてトレーナーは、最低限のリスク管理ができなければいけないと思います。同じトレーニングでも、その人に合うやり方や効果をしっかり見極めて指導できなければ、画一的なトレーニングでケガにつながる場合もある。その人に合ったメニューを選択する必要があります。そういう意味でもフィジカルとメディカルの両方の知識と指導技術があった方が良いです。
鍼灸師を目指す方へメッセージ
my favorite things
趣味は、ランニング、ゴルフ、山登り、居合、太極拳… 休日は身体を動かしていることが多いです。特にランニング、ゴルフ、山登りなどは一年ごとそれぞれの目標を立てて頑張ってトレーニングをしています。
40歳過ぎてもまだまだ更新中。
スペシャルインタビュー
本場の中医学を学ぶ
神戸東洋医療学院で培った経験と知識を
夫と違うアプローチで活かしたい
神戸東洋医療学院で培った経験と知識を
夫と違うアプローチで活かしたい
木下美穂さん
Feel Free きのした鍼灸院2011年 鍼灸コース卒業
- 当学を選んだ理由は?
- 神戸東洋医療学院のことは、卒業生の紹介で知りました。他校も見学もしていたのですが、決め手は電車1本でいけるというところ。三宮は各線が出ていて何かと便利で、それが何よりの魅力でした。 あとは、主人と同じく自由な校風です。のびのびと学ぶことができました。
- 卒業後、研修生制度を利用して引き続き学ばれていましたが、いかがでしたか?
- 楽しかったですよ!研修生は、1人の先生についてその先生の受け持つ授業に参加することができるので、授業は復習というか、辿りながら自分でも勉強しつつ、授業後などに先生に更に指導いただきながら、学んできたことをもう一歩深めていくような感じでした。 私は中医学の福家先生につかせていただいたのですが、当時天津中医薬大学の授業にも入れたので、漢方のお話などもたくさん聞かせていただけて。福家先生は中国で学んで中医学の学位をとられたので、生薬の配合など授業の中で触れる内容よりも更に専門的で楽しかったです。福家先生…すごいやん、と改めて思い知りました。
- ご夫婦での役割分担、治療について
- 主人がスポーツ系の疾患を見ているので、それ以外については私が看させてもらっています。患者さんも、主人の患者さんから私の患者さんになることもありますが、神戸東洋医療学院付属治療院で勤務していたことがあって、その当時見ていた患者さんが継続して来てくださったりして。 3年生の学生臨床から中医学を専攻していたので、患者さんの訴えてくる症状を診るだけでなく、脈診をすることで、患者さん本人が気付いていない本人の気づかない不整脈や心臓疾患などをみつけたこともあります。そのように、主人とはまた違ったアプローチで患者さんを診て治療していきます。私自身スポーツは全くしないですし、本当に全然違うタイプの2人ですので住み分けがきっちりできている感じですね。
- 学生時代の思い出は?
- 私も主人のひとつ下の学年で学友会の会長をしていたので、学校行事はかなり参加しました。ですので、天馬祭やスポーツ大会など学生同士の交流の中で…主人にも出会いました(笑)運営側なので、一緒に企画したり人を集めたり、そういう中で仲良くなりました。そこでの経験は、今もボランティアなどの地域活動の中で活きていると思います。
- 今後の展望について
- 最近、鍼灸治療を受けたいって人が多いんです。マラソンのボランティアなどに参加していると、そういう声が聞こえて、鍼灸の認知度の広がりや鍼への抵抗感の薄れを感じています。 きっかけを作ってそういう流れをもっともっと広げていければいいなと思います。
- 鍼灸院に来られる人はまだ良いのですが、本当に重症な方はなかなか来ることができない方も多いです。以前、交通事故で入院していた時期があるのですが、そのとき神戸東洋のOBの方が病院に来てくれて治療してくれて…めちゃくちゃ楽になったんですよ!外科病棟に入院してたのですが、外科病棟って、病院にもよるでしょうが、基本的には手術やリハビリなど以外のケアはなかなかされないんですよね。 傷みや治癒の遅れなどについて、医師も忙しいので「しかたないこと」と割り切っていて、それが日常で。そういった置いてきぼりになっている患者さんへのケアこそ、鍼灸師の出番だと思うんです。実現ができるかどうかわかりませんが、そういった経験から、病院に入って患者さんをケアできるようになればいいと考えています。 本当は鍼灸治療を必要としていたり、受けたいという患者さんは多いけれど、残念なことに選択肢に入っていない為に選択できない。そういった方々にきちんと知ってもらえる機会をつくる。そんなことができればいいと思います。
- あと、やはり中医学をベースとしている人間としては、漢方をやりたい気持ちはあります。患者さんにも、治療の中で話として漢方の話もしますが、実際どこに行けばそれが手に入るのか…など考えると、周辺にもあまりないので、自分でそこまでケアできればいいなと思うんです。 登録販売士の資格を取得すれば、漢方も販売できますし、神戸東洋医療学院もそうですし、卒業生も両方やっているとろがあるので、いつか挑戦したいなと思っています。
鍼灸師を目指す方へメッセージ
つらいことがあっても、暖かく花開く季節が必ずやってきます。