- 開業
- その他
豪華客船で勤務したご縁で鍼灸院を開業。
自分にしかできないオリジナルをもっと突き詰め、
将来的に日本と世界を繋ぐ窓口となり、海外で治療院を開業したい。
自分にしかできないオリジナルをもっと突き詰め、
将来的に日本と世界を繋ぐ窓口となり、海外で治療院を開業したい。
檜山剛一さん
ハリナビスはり灸院2009年 鍼灸コース卒業
入学前
たった一回の鍼灸治療で感動し、鍼灸の世界に進むことを決意
- 神戸東洋医療学院の入学前は高校生でしたが、いつ頃から鍼灸師を目指そうと思っていましたか?
- 中学の頃から公立の高校に進学したら医療系、私立の高校に進学したら農業系に進むことを漠然と決めていました。 結局、公立の高校に進学したので、医療系の道に進むことにしました。そんな時に、友人に誘われたオープンキャンパスで初めて鍼灸のことを知り、実際に治療を受けてみました。 産まれた頃からアトピーだったのが、たった一回の鍼灸治療で改善された事に感動し、鍼灸の世界に進むことを決めました。
- なぜ、神戸東洋医療学院を選びましたか?
- 派手に学園祭などを開催するなど、遊びばかりの楽しそうな雰囲気ではなく、落ち着いた校風だったことと、同年代が少なそうだったことが決め手の一つでした。 学びに行く場所ではなく、遊びに行く場所というイメージが強い学校とは違い、オープンキャンパスの時にここはしっかりと勉強ができる環境だと感じました。 他の学校と比べて鍼灸に対して真剣に取り組んでいる姿勢を感じ、神戸東洋医療学院を選びました。
在学中
年上の方と接することが良い刺激!
- 実際に入学して如何でしたか?
- 昼間部に在籍していましたが、同期生は社会人の方がほとんどでした。同年代との会話も楽しいですが、やはり年上の方と接することが若い自分にはとても良い刺激で、勉強になりました。 周りの方の真剣さや学ぶ姿勢は同年代の人よりも強かったように思います。そんな方たちに囲まれて一緒に勉強できたことは変えがたい経験で、そういうところがこの学校の良さだと思います。
- 在学中に特に印象に残っているエピソードを教えてください。
- 学生生活では、360個以上ある経穴をひたすら覚えることに必死でした。毎週、山手線ゲーム的に覚えていき、復習もしっかりとしながら積み重ねていきました。 そのおかげで国家試験では特に勉強する必要もないくらい、頭に入っていました。また、鍼が良いところに当たる感覚を養うまでに相当時間がかかりました。 筋肉の触り分けやツボの探し方などがとても難しかったです。その為、何度も何度も繰り返し練習しました。 卒業後はその努力が実となり、早くに感覚を身に着けることが出来たと思います。 学生生活で努力したことが、今の自分の役に立っているので、今ではその日々が良い思い出です。
卒業してからがスタート
- 卒業した時はどのような心境でしたか?
- 学院へ行かない寂しさと、経験不足からくる不安がありました。学院では積極的にサークルに参加したり、授業前後に学生同士で鍼の練習をしたり、実技練習はたくさんした方だと思います。 それでもやはり、現場に立ち、プロとしてお金を頂いて施術をするにはまだまだ経験不足でした。卒業した時には、ここからがスタートだと実感しました。
卒業後
豪華客船で勤務したご縁で開業することができました。
- 鍼灸師の資格を取得され、現在開業されるまでの経緯を教えて下さい。
- 資格を取得してから、今とは違って当時は求人数も多くなく、募集倍率も高かったため、就職はなかなかうまくいきませんでした。 今となってはどの治療院でも人手不足が問題となっており、求人数も比べものにならないほど多くなっていることが羨ましいです。 その為、1年間くらいは飲食店などでアルバイトをしていました。最終的に学校のお世話になっていた事務の方からご紹介いただき、無事に治療院に就職することができました。 数年働いて退職し、東南アジアや国内をバックパッカーで旅行をしながら、勉強のためにあちこちの鍼灸院へ治療を受けに行っていました。 そこで豪華客船で働く鍼灸師の仕事があることを知りました。それから約2年半、毎日英語の勉強をして豪華客船の専属鍼灸師として乗船することになりました。 今は豪華客船でのご縁で、治療院を開業することができました。
- なぜ客船の専属鍼灸師を目指されたのですか?
- 大阪で鍼灸師をしている中国人の先生に紹介してもらい、客船の中で旅行をしながら施術ができると聞いて、興味を持ったことがきっかけでした。他の人とは違うことがしたかったという思いがあり、豪華客船の専属鍼灸師を目指しました。 それとはまた別に、豪華客船で働くとお金がけっこう貯まるんじゃないかな、というイメージもありました。実際にはあまり貯まらなかったし、使うことのほうが多かったですけどね。
客船の専属鍼灸師に必要なことは「知識」と「英語力」
- 客船の専属鍼灸師になるためにまず何からはじめましたか?
- 先生に紹介してもらった後、インターネットで検索して、豪華客船の専属鍼灸師を募集している英会話教室を見つけました。 イギリスにあるクルーズ船にスパのメンバーを派遣する「One Spa World」という会社があり、日本では唯一、東京にある英会話教室「English Village」が窓口でした。 鍼灸師以外にも、マッサージセラピストやエステティシャン、ネイリスト、美容師、フィットネストレーナーなどもこちらの英会話教室を通して、客船での仕事を得ています。 客船で働くには、個人で海外の人事部と連絡を取り合うことも可能で、実際に何人かそういった経由で鍼灸師となった日本人もいましたが、非常にハードルが高く、英会話によほどの自信がないと厳しいと思います。 そのためまずはこの英会話教室で、英語の学習や専属鍼灸師となる試験の練習を行いました。英会話教室は東京にありますが、スカイプでの個別授業も行っているため、地方に住んでいても客船の仕事に就くことは可能でした。
- 英会話教室に通う前はどの程度の英語力で、試験を受けるまでにどんな勉強をしましたか?
- 高校生の時、英語はそこそこ得意でした。英検、TOEICなどは持っていませんが、おそらく英検3級程度だったと思います。 窓口でもあった英会話教室以外に、もう一つ別の英会話教室を掛け持ちし、英語漬けの毎日でした。 英会話教室から出される宿題をし、自分でも考えて英文を作ったり、日々の業務で使う内容をノートに書いて先生に確認したりしていました。 また、毎回授業を録音し、それを聞きながら通勤して復習時間に充てていました。英語の勉強を休んだ日はほとんどありませんでした。
- どのような試験を受けられたのですか?
- 客船での仕事を得るのに必要な試験は2つあります。まずは船員になる為の試験、そして鍼灸師としての試験です。 船員になる為の試験では、レストランでの会話を聞くリスニングテスト、英単語力のテスト、文章の並び替えテスト、長文テストの4つのセクションからなります。 50問中、鍼灸師は80%以上で合格になります。これには毎日英語を勉強して、2年ほどかかりました。単語や長文は結構難しかったと思います。 鍼灸師としての試験については、英会話教室が傾向と対策を練ってくれます。こちらは所謂、就職試験のような内容です。 なぜ船で働きたいのか、何年鍼灸師としての経験があるのか、どのような患者様を治療することが出来るのか、などが聞かれます。 ツボに関しては国際ラインでの名称で覚える必要があり、それ以外に、もし売り上げが悪い場合はどのような工夫をして集客するのか、というような経営に関しての質問もありました。 鍼灸師に関しては、技術的な試験はありませんでした。
互いを支えあい、協力し合うことのできるスパのチーム
- 客船での1日の流れは?
- 客船勤務は、1回で7か月の契約と決まっています。2回乗船の契約をしましたが、鍼灸師に関しては、基本的に自分でどれくらい働くか、いつを休みにするか決めることができます。 1週間のうち52時間の勤務時間を調整する感じです。豪華客船にはポートデイとシーデイというのがあり、ポートデイは朝の8時から夕方5時ごろまでに港に着いて、時間になれば出港し、次の目的地に向かいます。 シーデイは港から港までの移動期間で、1日中海の上にいる日のことをいいます。その為、1日海の上にいる時が一番大事な日で、そこでいかに売り上げをしっかりあげるかが大事になってきます。 そういう日はお客様がいるので、朝7時から夜9時まで勤務していました。忙しい時で1日に12人の方を施術したこともあります。 逆にポートデイの日は港に着くまではお客様をとって、港に着いて出向するまでの時間は全部休み、というようにしてタイムスケジュールは自分で管理できました。
- 休日はどのように過ごしていましたか?また、休日の楽しかったエピソードを教えてください。
- 丸一日休みというのは、7か月で3回程度でした。ほとんど毎日が仕事でしたが、何時間も続けて仕事をしているわけではなかったので、休み時間は長かったです。 一番印象に残っているのは、ノルウェーでサイクリングをしたことです。日本でも長時間、自転車に乗ったことがなかったので、いきなり6時間ほど自転車を漕いでしまい、大腿四頭筋がつりました(笑) 雪解け水が川になり、川から海になる所を見に行くなど、自然と地球の大きさを肌で感じることができたことが良い経験でした。
- 客船での雇用形態や給料面について教えてください。
- まず試験に合格したら、英会話教室を通して派遣会社に登録し、そこから各船会社に派遣されます。 1回で7か月の契約ですが、次の人が決まっていないと、決定するまで延長することもあります。 給料は1か月に800ドルは保証されており、それ以外は歩合制です。 だいたい1回の施術費用が150ドルで、そこにプラス15%のチップをいただきます。 チップは全部自分のものになりますが、施術費用に関しては契約している船会社によって異なりますが、約9%程度の金額が自分の手元に残っていました。 今は少し変わっていて、14%に上がったところもあるみたいですよ。
- 客船には鍼灸師以外にもどのような職種の方がクルーとして乗船していますか?
- 豪華客船の中にはメディカルセンターがあって、ドクターやナースも常に3~4人はいました。鍼灸師はスパのメンバーとして勤務します。 スパの中には、ネイリストやヘアドレッサー、フィットネスジムトレーナー、マッサージセラピスト、フェイシャルエステ、メディスパドクターもいました。 乗船するクルーの人数に関しては、船の大きさによって異なります。僕が乗っていた船は3500人ほど乗れる客船だったので、一応スパメンバー全員で26人はいたと思います。 ちなみに鍼灸師は船に1人でした。乗船したクルーはスパの中のサービスはタダで受けられるので、お互いに協力し合って、仲良くなってお客様を紹介してもらうこともありました。 こういうところは持ちつ持たれつというか、チームで働いているという結束感が良かったです。
開業するときの技術を磨くことができた
- 豪華客船の専属鍼灸師になって良かった事を教えて下さい。
- 日本の治療院で働いているときには、全く考えたこともないようなことを体験できることですね。豪華客船で働いている時は、最低の基本給が保障されていて、それ以外は歩合制になります。 ですから、売り上げが低い時はマネージャーから注意されます。周りが忙しいのに、自分のところにはお客様が来ない、なんてこともあって、いかに気持ちを落とさずモチベーションを維持し続けるのか、 お客様をどうやって集めてくるのか、ということを考えながら、トライし続ける。この時経験したことは、開業した時に活かされました。 開業したときの気持ちの持ちようや経営力、マネジメント力などはここで磨かれたと思います。
- 苦労されたことを教えて下さい。
- 乗船してすぐに、この船にどんなサービスがあるのか、という説明の日が必ずあります。そこで鍼灸について説明するセミナーが大変でした。 鍼灸のことを知らない人たちに、鍼灸とは何か、治療がどういったものなのか、どういうことに効果があるのかなど、お客様に分かりやすく、 なおかつ面白おかしくトークしながら鍼灸の良さを伝えるということが、最初は全然出来ませんでした。これは本当に場数を踏むしかなくて、初めのころは苦労しました。
降りるとまた乗りたくなる、他にはない面白みがある
- 豪華客船にもう一度乗船したいと思いますか?
- 乗船しているときには大変なことも多いですが、一度降りてしまうとまた乗りたくなるんですよね。やっぱりそこでの経験は他とは比べられない面白さがありますから。
勉強が楽しいと思える職業「鍼灸師」
- 鍼灸師として働く中でのやりがいは?
- 世界中どこへ行っても仕事が出来るということです。専門職なので、知識と技術があれば何処でもすることは同じです。その都度出てくる壁は、乗り越えればまた成長させてくれる材料です。 職人的な仕事論の面白さもありますし、勉強が楽しいと思える職業に就いたことは、自分にとって凄く良いことだと思います。
今後の展望
治療院の売りは自分自身。自分にしかできないオリジナルをもっと突き詰めていきたい。
- 技術と知識はあって当たり前です。差別化するにはどうすれば良いかを常に考えてきました。やはり、治療院の売りは自分であるということです。 その為、鍼灸以外の分野からの情報や情勢も勉強し、様々な経験もしてきました。今後もそれを続け、自分にしかできないオリジナルをもっと突き詰めていきたいと思っています。 また、将来的に海外で治療院を出すことが夢です。海外に出たい日本人鍼灸師と、日本の文化や治療を学びたいヨーロッパの方々との窓口となり、交換留学のような事業が出来れば良いなと考えています。 特にニューヨークとアムステルダムに興味があります。どちらも移民が多く、刺激的な場所です。常に刺激があるという環境は、そこから新たな考えに繋がることも多く、自分にとってはかなりプラスだと思います。 早く夢を実現できるように、今は日々努力しています。
鍼灸師を目指す方へメッセージ
my favorite things
休日はほとんどありませんので、バイクに乗って往診に出かける事が気分転換と仕事を兼ねています。
夢中になっている事は、院のインテリアや音楽、雰囲気を変えてみる事と、マーケティングの勉強です。
今頑張っている事は、考えすぎない事と、何でも試してみる事です。頑張っている意識はほとんどないですが。