- 就職
- 訪問鍼灸
- 定年後からの入学
定年を機に入学を決意
団塊の世代が高齢の時代、鍼灸の必要性を感じた。
団塊の世代が高齢の時代、鍼灸の必要性を感じた。
藤田博也さん
株式会社ハピネス2024年 鍼灸コース卒業
入学前
ひと企業で定年まで勤務。勤続と入学の分かれ道
- 社会人経験や人生観などから鍼灸師を目指されたきっかけがあれば教えて下さい
- 会社の定年を機に鍼灸師を目指しました。定年の5年くらい前から先の事を考えはじめていました。元々趣味で少林寺拳法をやっていた為、ツボや経絡に興味関心がありました。
また、年齢的に同世代で病気やケガをする人が多く、健康思考が高くなり独学で漢方検定を取ったりもしていたのですが、やはり通信教育や自己学習だけでは限界があり、ものにならないと感じていました。
そこで、本格的に学校に行って、健康に根差した知識や技術を習得し、今後の生活あるいは人生に活かしたいと考えました。
団塊の世代が高齢になり、今後さらに鍼灸の必要性も多くなり、お役に立てるのではないかと考えました。
いままでの人生と、これからの人生。
- 年齢に対する不安、3年も通わなければいけない、という不安はありましたか?
- 正直、定年から考えて3年というのは長く感じましたし、在学中の体力や記憶力の衰えは心配でした。
ただ、行動をしなければ変わらないと思い、今後の人生の起点として、思考を変えて頑張ってみようと思いました。
- 神戸東洋医療学院、夜間部を選んだ理由を教えて下さい。
- 多くの鍼灸学校は大阪にあり、神戸東洋医療学院は他の学校に比べ神戸の自宅から近かったことと、駅からもアクセスが良かったので通学し易いと思いました。
何校か候補がありましたが、新卒(高校生)が多い学校は一緒にやって行けるかどうかの不安もありました。神戸東洋医療学院はオープンキャンパスに参加した時に他の学校より社会人や年配の方も多く参加されていたので、私も一緒に勉強に勤しめるかなと思いました。 学費は頑張れば工面出来ましたが、専門実践教育訓練給付金制度の対象校でもある事は家族を説得するのにも必要でした。
会社定年後も再雇用で勤めるか、会社を完全に辞めて昼間部にするかの選択がありました。勤めていた会社からも勤続してくれないかとのお声もあった為、単純に16時の退勤後に通える夜間部なら仕事と勉強が両立できるだろうと考えました。
在学中
- 実際に入学していかがでしたか?
- 入学当初は夜間部なので、様々な職業の方がいる新鮮さと、22期生は男女比も同じくらいだったので、とくに大きな不安はありませんでした。
ただ、仕事後に授業を受けること、日々の課題や実技の練習などに加え、解剖学、生理学をはじめ、習うこと、聞くことが初めてで戸惑いも多かったです。
職場が自宅から遠かったこともあり、入学前と睡眠時間がかなり変わりました。その為、夏頃までは生活リズムに慣れるまで大変でした。
加えて年齢的にも、若い頃は一回でお覚えたことも、何回も繰り返し覚えなければならないことが大変でした。手技の練習も手が思うように動きませんでした。国家試験に出題される項目と直接的に関係のない科目、授業もありましたが、結果的には鍼灸師として幅を広げ、必要な知識であるので、今では授業を受けて、聞いていて良かったと思います。
学校での生活は、鍼灸の勉強に集中できる環境が整っており、イベントも色々あり学生生活に浸れることができました。また種々のイベントを通じて昼間部の学生や違う学年の方、OBの方々と交流し親交を深めることが出来て良かったです。
- 多くのオプション授業を受講されていましたが、時間はどのように確保しましたか?
- オプション授業の種類が豊富で、私は手技療法(基礎・応用)・中医推拿学・小児はり・反応点(入門、初級)を受講しましたが、できれば全オプションを受講したかったです。
受講したオプション授業の多くは3年生になってから受講しました。本当は1年生のうちから受講したかったのですが、中には午前中の講義もあったので、タイミング的に難しい年も多く…
有給を駆使して受講しました。どのオプション授業も卒業後の今の仕事に役立っているので、頑張って受講して良かったです。
コロナ禍で2年連続学院祭が中止に…初めての経験は3年生になってから
- 入学した年はまだコロナ禍で、3年間で経験するはずの天馬祭(学院祭)は3年生になってから初めて経験しました。3年生は臨床実習もありますが、
その時担当だった、かっさブースを訪問されたお客様と接し、施術体験で「気持ちよかった」という評価を直接いただいたことは在学中で一番印象に残っています。
また、学校からもぐさ工場の見学に行ったこと、ヨモギから艾への製造過程の見学も印象に残っています。
- 国家試験に向けての取り組みや合格した時の感想を教えてください
- もちろん、通常の授業や科目試験もあるので、国家試験の勉強だけに使える時間は少なかったですが、授業や学内の試験で重点的に教えてもらったことを繰り返し確認、勉強をしました。
もう少し計画的に物事を進めていれば良かったのですが、夜更かしや不規則な生活が続き、コロナやインフルエンザをはじめノロウィルスやロタウイルス等の感染症に罹患し易く、体調は最悪でした…(笑)
勉強用のアプリや模試では、年内にはある程度の点数が出ていましたが、実際に合格することで単純に次年も試験を受ける必要がなくなったことでホットしました。一安心といったところです。
卒業後
1週間で約40名を治療、鍼灸のニーズの高さを実感
- どのような経緯で現在の仕事をするようになりましたか?
- まずは国家試験に合格した、学校で習った、知識を付けた、技術を習得しただけでは意味がなく、せっかく入学し国家試験に合格したので、実際に鍼灸技術を活かしたいという思いで就職を考えました。
入学動機でもありますが、鍼灸で自分の健康や高齢者をはじめ、地域の人々の健康を支えたいとの考えと、現実的に日本は超高齢化社会に突入しており、急速な社会の変化は今までの医療制度では解決できない様々な問題を抱えていると思いました。
要介護の高齢者の増加やQOLの低下が問題となっていることから、鍼灸師として活躍すること、しかも従来の通院での鍼灸治療より、こちらから訪問する訪問診療の在り方が社会的にも自分的にも合っていると思いました。
就職は3年生の時に考えはじめ、国家試験が終わってから実際に動き出しました。今の職場は年齢不問などの条件に見合う会社を探し、その中から面談で定年後でも働ける、鍼灸業界が初めての者に対しても研修制度があり、自宅にも近いということで即決、社員として採用となりました。
- 実際に働いてみて、鍼灸師として心がけていることや課題を教えてください
- まずは自分の健康、そして他人の健康を考えます。自分自身が心身共に健康でないと人を治せないと思うからです。そして治療を行う以上、人々を鍼灸で幸せに、人に寄り添った治療を行うことを心掛けています。
課題としては日々の鍼灸の知識や技術の維持向上と西洋医学と乖離しない治療が大切になってくると思います。訪問鍼灸では色々な疾病を持った方がおられ(例えば脊椎狭窄症、脊椎圧迫骨折、パーキンソン病、ALS、脳血管障害、認知症等)、その方々に施術していくので、色々な知識が必要になります。
実技面でも、在学中に受けていた実技の授業は、卒業した今、もう一度受けなおしたいくらいなので、在校生の皆さんは今のうちにたくさん練習される事をおすすめします(笑)
また、ご本人、ご家族、医師、看護師、施設スタッフ、ケアマネージャー等とチーム医療としての連携やコミュニケーションも重要になってきます。中にはコミュニケーションが十分に取れない患者様もいらっしゃるので、その場合は技術で補う努力が必要です。
私は、まだまだ鍼灸業界では新人で未熟者なので経験は少ないですが、痛みや疲れが軽減した、お腹の調子が良くなったとお礼を言われ感謝されたこと、特別養護老人施設で施術後、ブースの入口まで見送りを受けたことも嬉しかった出来事です。初めて鍼灸を受ける患者様(全体の10%)に鍼灸への抵抗感を無くすことも重要な役目だと思っています。
東洋医学や中医学、大変な思いをしながら学んだ知識を、患者様から質問があった時に教えてあげられる、答えられる喜びもあります。
今後の展望
自分の身体が動く限りは鍼灸師として働いていきたい。
- 鍼灸は一度覚えれば何歳になっても使える技術と考えます。定年後から鍼灸を始めましたが、人生百年と考えるとまだまだこれから鍼灸あるいは鍼灸業界で行えることがあるという認識です。
日本国内では、鍼灸という言葉は知っていても実際に治療を受けた人、鍼灸治療の経験がある人はまだまだ限られていることから、鍼灸の良さや効果を知ってもらい、高齢者はもとより、小児から全世代の人に鍼灸治療を普及させていきたいと思います。
東洋医学に興味があってもなかなか鍼灸院へ行くことを躊躇している人も多くおり、あるいは高齢や障害がある為、鍼灸院に通うことができない人を含め、こちらから出向いて鍼灸治療を宣伝し、行い、その良さを広げていきたいと思います。
とはいえ、車を運転しての移動になるので、こちらが訪問するにしても限界はあると考えます。それでも、徒歩で行ける範囲の患者様宅など、身体が動く限りは鍼灸師として働いていきたいです!